Coworkのスキルとは、Claude Code Skillsと同義であり、“SKILL.md” というファイルに手順や指示を書いておき、必要なときだけClaudeに読み込ませて機能を拡張する仕組みのことをいいます。本稿では、このスキルをレストランに喩えて理解したうえで、Claudeと対話しながらスキルを作る実際の手順と、作ったスキルの安全性をどう担保するかまでを扱います。
目次
スキルとは何かーーレシピ本・料理人・厨房
SKILL.mdは、レストランの場面で料理人が厨房で料理する前に読む「レシピ」に例えることができます。
| 喩え | 実体 | 役割 |
|---|---|---|
| レシピ本 | SKILL.md | 座標系・API・テンプレートの使い方など、Claudeが知らない専門知識を記述したファイル |
| 料理人 | Claude(AI) | レシピを読み、ユーザーの注文に合わせて具体的な調理手順(コード)を考え出す |
| 厨房 | Linux VM | Claudeが書いたコードを安全に実行し、完成品(ファイル)を作る隔離された環境 |

SKILL.mdが持つ4つの知識
たとえば drawingml-flowchart スキルのSKILL.mdには、次のような知識が書かれています。
- 座標系の知識ーーEMU単位系、USレターのページレイアウト戦略
- API・ライブラリーー
flowchart_lib.pyの関数群(rect、diamond、arrow など) - テンプレート構造ーー.docx ZIPの構成、DrawingML名前空間
- 検証手順ーーLibreOfficeでPDF変換し目視確認するワークフロー
重要ポイント
SKILL.md自体はただのテキストファイルです。実行されるわけではなく、Claudeの「知識」を拡張するもの。だからこそ毎回、要望に合わせて異なるコードが生まれます。

実行環境としてのLinux VM
- 隔離されたサンドボックスーーユーザーのPCから分離されたLinux環境で安全にコードを実行
- プリインストール済みーーPython、Node.js、LibreOfficeなど必要なツールが揃っている
- マウントで接続ーーVMの
/mnt/outputs/がホスト側の出力フォルダに対応 - 自動検証ループーーPDF変換して目視確認し、問題があれば修正・再実行
最後の自動検証ループが特に重要です。これがあるから、スキルは「書いて終わり」ではなく「確かめて仕上げる」動きになります。
スキルの処理フローと三層構造
drawingml-flowchart スキルを例に、ホスト・Claude・VMの三者がどう動くかを追ってみます。
- ホスト:ユーザーが「Wordでフローチャート作って」と依頼
- Claude:SKILL.mdと
flowchart_lib.pyを読み込み、手順・座標系を理解してPythonスクリプトをその場で生成 - VM:スクリプトを実行してDrawingML XMLを生成、LibreOfficeでPDF変換して目視検証
- Claude:検証結果を確認し、必要なら修正
- VM → ホスト:.docxを
/mnt/outputs/へ出力し、完成したファイルをユーザーに提供

整理すると、次の三層構造になります。
| 層 | 担い手 | 働き |
|---|---|---|
| 知識層 | SKILL.md | 「何をどうやるか」の専門知識を記述。静的なテキストであり、実行されない。 |
| 思考層 | Claude | SKILL.mdを読み、ユーザーの要望に合わせて毎回異なるコードを創造的に生成する。 |
| 実行層 | Linux VM | 生成されたコードを隔離環境で安全に実行し、完成ファイルをユーザーに届ける。 |

ユーザーはコーディングすることなく、自然言語で指示するだけ。AIはその指示を理解し、実行する上で必要なスキルを選択・参照したうえで指示内容を実行する。スキルはAIエージェントの価値そのものーー資産です。
Claudeと一緒にスキルをつくる
SKILL.mdは、ファイル先頭のYAMLフロントマター(—で囲まれたブロック)とマークダウン本文の2パートで構成されます。フロントマターは「このスキルをいつ誰が呼び出すか」を制御する設定ファイル、本文は「呼び出されたときにClaudeに何をさせるか」を記述する指示書、と理解すると整理しやすいでしょう。とはいえ、はじめから自力で書いていくのはハードルが高い。最も早い方法は、Claudeと対話を重ねてスキルを構築してから、それを登録することです。いわば帰納法的なアプローチです。
実例:DrawingML Flowchartスキルができるまで
- テキスト抽出を頼むーー「図面PDFを読み込んで、Fig. 3とFig. 4のフローチャート図内のテキストを全て書き出してください」。Claudeはページを特定し、分岐ラベルまで含めて書き出してきます。
- Word化を頼むーー「同じチャート図をワードファイルのフォーマットで書き出して、抽出したテキストを適切に配置してください」。Claudeは出力後、PDFに変換して目視検証まで行います。
- 不十分な点を指摘するーー「チャート図の再現性が残念ながら不十分でした。ワードの図形作成機能を使ってもっと精緻なものにしてみてください」。
- ブレイクスルーーーClaudeがDrawingML図形(矩形・ひし形・角丸矩形・矢印コネクタ)で作り直し、「No」のループバック経路も3本の線分で再現、参照番号には下線書式まで適用してきました。
- 成功した手順をスキル化するーー「今度は素晴らしい出来です。ぜひ今回のフローチャート図の作成手順を “DrawingML_Flowchart” というスキル名でまとめて登録してください」。
Claudeは再利用可能なPythonライブラリを作り、テストで動作確認したうえでスキルをパッケージ化しました。できあがったのは次の2ファイルです。
- SKILL.mdーーレイアウト計画(インチ単位の座標設計)、図形タイプの選択(rect / diamond / roundRect)、コネクタの方向制御、ループバックパターンなどのノウハウ
- scripts/flowchart_lib.pyーー
rect(),diamond(),roundrect(),label(),arrow(),line()のヘルパー関数と、複数ページ対応のbuild_docx()
以降は「フローチャートをWordで作って」と依頼するだけで、このスキルが自動的に呼び出されます。スキルの中身を指定するのはあくまでAIーーユーザーは成功した手順を確認し、それを固定化するよう伝えるだけです。
ツールの安全性を担保する
「よし出来た!」と手じまいにしたいところですが、もう一段あります。スキルと言えども、MCPと同様のリスク管理は必要です。そこで、SKILL.mdの安全性を検証するためのスキルを使ってリスクを把握します。
指示:mcp-skill-screening スキルを利用して、次のスキルを評価してください。”DrawingML Flowchart Skill”
Claudeは評価対象のSKILL.mdと同梱スクリプトを静的に確認し、基準書(評価軸・信号機ルール・監査チェックリスト)に基づいて判定します。

結果は「黄」判定でした。AIの総合コメントは次のとおりです。
B1が高リスク側のため、厳格運用ルール「評価軸のすべてで低リスク側」を満たさず、緑ではなく黄と判定。補完策の難易度は低く、軽微な運用補完で運用可能。
flowchart_lib.pyのimportは zipfile と re のみで、ネットワーク・サブプロセス・任意ファイル読み込みは一切無いこと、ファイル書き込みはbuild_docx(output_path)でユーザーが明示的に渡したパスに限定されること、外部ドメインへのアクセスは皆無であること、用途がOOXML生成という極めて限定なドメインに閉じていること、そして将来の差分をサイレント変更検知で常時監視対象に組み込むこと、これらが揃って初めて「形式上はB1高リスクだが、実質リスクは緑相当」という判断が成立し得ます。
自作スキルであっても機械的に評価軸に当てはめ、どの条件が揃えば実質的に安全と言えるのかまで言語化させておく。運用に乗せる前のこのひと手間が、後の安心につながります。判定が黄以上であれば、システム部門やコンサルとの相談も検討すべきでしょう。
まとめ
- スキルは知識層(SKILL.md)・思考層(Claude)・実行層(VM)の三層構造で動く。
- SKILL.mdは実行されないただのテキスト。だから毎回異なるコードが生まれる。
- スキルづくりの最短路はClaudeとの対話を重ね、成功した手順を固定化すること。
- 作ったスキルは審査スキルで機械的に評価し、リスクを言語化してから運用に乗せる。
- そして何より、スキルはAIエージェントの価値そのもの(資産)である。
Coworkを駆使して業務効率化はできます。しかしその後の価値創出は、人間が行う知恵比べです。翻訳者・翻訳会社の役割は “Human in the loop” へと移り、AIを敵と思えば思考停止、味方にすれば新たな付加価値が生まれるーー本セミナーの結論はそこにあります。